クローバーや東京アリスの著者である稚野鳥子が描く「月と指先の間」。
全4巻の完結作品になります。
この漫画の主人公はなんと55歳。
20代から漫画家として生きてきたベテラン女性漫画家を主役にしたお仕事&恋愛漫画です。
漫画家になるという夢を叶えた20代から活躍し続けて30年以上。
毎月の締め切りは若い時と同じ様にやってくる。
「漫画」に追われながら生きる日々をどう過ごすのか、今自分は果たして幸せなのか。
50代は先のこと。と感じる人もいると思いますが、未来を考え始める20代後半や30代の人たちと悩むことは変わりません。
年代は違えど、主人公 御堂アンの仕事との向き合い方、そして恋愛感についての価値観に共感できる事が多いのではないでしょうか。
仕事や恋愛の未来を見つめ直したい方、自分自身の人生を見つめ直したい方に
月と指先の間を処方します。
※漫画をおすすめする上での若干のネタバレが含まれる可能性がございます。
「月と指先の間」あらすじ
女性漫画家 御堂アンは55歳独身。
月2〜3本の連載を抱える人気ベテラン漫画家。
修羅場を共にしてきた女性アシスタントと毎日激務をこなす日々。
そんなアンには苦手としているものがある。
それは笑わない人。
長年の漫画家人生のうち、何度も担当作家が変わっているが、その中でも特に苦手だなと感じていたのが
アンの漫画を掲載している雑誌の現編集長 45歳の黒月だった。
長年の恋人(既婚者)との関係もうまくいっていている穏やかな日々の中
身体の疲れは年々増していくものの自分の仕事に向き合いながら充実した日々を送っていた。
そんな中、アンに密かに想いを寄せる編集長である黒月に「今、幸せですか?」と問われたアン。
その問いに答えられぬまま、身体の不調や仕事の不運が重なり自分が信じていたものを不安に思う様になる。
一人で不安な時、助けてくれたのは黒月で!?
10歳下の黒月、長年の恋人、そして人生の中で一番熱を入れている漫画家という仕事に向き合い
バランスに悩みながら生きていく女性の物語です。
女性の悩みは年代が違えど変わらない
一人で生計を立て生きていくことに慣れてしまっているアン。
友達も多く、仕事も順調だと結婚に価値を見出さない。
結婚という言葉に憧れる自分もいるけれど、今の生活に満足していると
人と一緒に生活する事が不安になることも。
そして仕事について。
20代後半頃の女性からは仕事に生きがいを感じ、日々仕事に追われる様に生活している人も多いと思います。
ですが、この先その仕事をずっと続けるのか不安になることもあるはずです。
退職金制度などがない個人事業主やフリーランスの方は特に、アンが抱える
「いつまで走り続けるのか」
という悩みに共感できる方が多いのではないでしょうか。
50歳の視点から描く恋や仕事の悩みは
刺さる言葉が多く、自分の人生を見つめ直したくなる漫画となっています。
ノンフィクション!?な漫画家のリアル
漫画家を主題にした漫画は数多く出版されていますが
何が面白いって、フィクションだとしても漫画家の働き方や原稿の進め方には嘘がないというところです。
漫画家が漫画家を描く時ってリアルが混ざるので、それが読んでいてとても面白いんですよね。
例えば、この月と指先の間の中には、ネームの進め方や入稿までの流れはもちろん
収入からアシスタント代がどのくらい引かれるか、原稿料はだいだいいくらくらいなのか。
映像化された場合の使用料についてが描かれています。
これがすごいリアル。
漫画家さんは会社を立てる場合もありますが、アンの場合は個人事業主だから自分で経理も行います。
そこに出てくる金額が、とにかくリアルなんです。
漫画家という職業に興味がある方や、漫画ってどのくらい稼げるの?って思っている人にもぜひ読んで欲しい。
フィクションだとわかっていても、リアルすぎて稚野 鳥子先生ご本人の実話なのでは?と思ってしまうw
自分にとって一番大切なことは何?
黒月にアピールされお付き合いをスタートすることになったアンは、
プライベートが充実することによって漫画のネームが描けなくなってしまうことに気づきます。
そう。うまくいかない恋愛を原動力にしている部分があるからこそ、充実した恋愛をしてしまうと
漫画が進まないのです。
うまく折り合いをつけるけど、恋愛を続けていくための問題も次々に発覚します。
既婚者の恋人とも縁が長いからこそ、すぐに関係を断ち切る事ができないアン。
そんなアンが最後に選ぶものは何か。
一般的な幸せなのか、漫画家として走り続ける事なのか。
その葛藤は読んでいて胸が苦しくなるほど。
稚野鳥子先生の言葉選びはいつだって胸を打つものばかりです。
ぜひ最後まで読んで欲しいなと思います。
稚野鳥子の月と指先の恋をご紹介しました。
恋と仕事のバランスって本当に難しい。
仕事が好きな人なら誰もが感じたことのある問題なのではないでしょうか。
恋愛がうまくいって結婚したとしても、仕事したい時、家庭と仕事のバランスに悩む人も多いですよね。
何を優先すべきか、どのバランスかが最適かは人によって様々。
ですがアン先生の、悩んだ末の決断を読んで一歩前に踏み出せる人が増えれば良いなと思います。
あと稚野鳥子先生の作品はわかる人にしかわからない小ネタが満載なのが楽しい(笑)
先生がオタクならではのネタはわかる人には頷けるものが多いはずです!
月と指先の間は4巻完結ですが、続きがありそうな終わり方なので
いつか稚野鳥子先生、続編書いてくれないかな、、。
楽しみに日々を生きていきたいと思います!